(ゲームの世界の)F1のセッティング part 6(『トー』のお話)その2

F1ゲーム

日々、最前線で働いてくださっている全ての医療従事者、その関連会社の皆様に、敬意と感謝を申し上げます。(2020.04.25追記)

つま先の向きは力のベクトル

 先回の記事の続き「トー」のお話(2)をしよう。「トー」とは「つま先」という意味だ。この角度を内側に向けることを「トーイン」という。内股の人のつま先をイメージしてもらえるとわかりやすい。タイヤがこの「トーイン」の状態にある時、どのような効果が現れるのだろう。
 基本的な力のイメージをつけておこう。タイヤを上から見た時に、「内股」に見える「トーイン」状態では、車が直進する際に左右のタイヤがそれぞれにぶつかり合う線上にに運動する。もちろん実際にぶつかるわけではない。少し内側を向いていることで直進方向への安定が増す。さらに、タイヤには内向きの力が発生するが車は実際には直進することからタイヤと路面との間に摩擦が発生している。トーイン時には簡単にいうとこれらの力が働いている。
 それでは「トーアウト」時はどうだろう。つま先が外側を向く「トーアウト」は「ガニ股」状態だ。誤解のないようにあえて付け加えておくが、実際には「トーイン」、「トーアウト」ともにコンマ数ミリ単位の調整であり内股でもガニ股でもない。つま先が外に向かっているため、タイヤにはエンジンから出力される直進する力がわずかに外側にも分解される。外側に向かおうとする力はコーナー侵入時のスムーズな回頭性につながる。トーアウトは車を曲げる助けとなる。しかしながら実際にはフロントタイヤのトー角はリアほどに重要ではない。というのはフロントタイヤはドライバーがステアリングを通じて操作することでその向きを常に変えることができるからだ。もちろん通常のステアリング操作では左右両輪ともに同じように動くため、トーインやトーアウトにすることはできない。その点いま話題になっているメルセデスのDASは画期的と言えよう。両輪を別々の方向に動かせる機能をステアリングにつけてしまったのだから。
 それではこの力がレースに如何に影響を与えるかを考えてみよう。まずは直進性と回頭性で考えれば、フロントタイヤは車の方向を「変える」機能を付与されているため、「曲がる」力をうまく発揮せねばならない。そのため基本は「トーアウト」に設定される。そしてリアタイヤは動力を路面に伝え車を前に進ませる力の一番の担い手となるため「トーイン」に調整して直進性と安定感を高める。また減速時において車の挙動の乱れを制御する役割も重要だ。リアタイヤを若干トーインにすることで回頭性ばかりでなく、減速時にかかる力を左右のタイヤで分散させず内向き一点に寄せる効果が期待できる。「キュッ」と眉間にシワがよる感じで力が寄せ集められるという例えは我ながら表現力の乏しさを痛感させられるが、何とか皆様の想像力でフォローしていただきたい。減速時に挙動が乱れないことでコーナーへの侵入の一助となるのである。

斜め成分がもたらす力

 ストレートでは車を真っ直ぐに走らせたい。理想はフロント、リアタイヤ共に真っ直ぐに取り付けられ(トー0°)、余計な摩擦を排除することである。ただしそうは簡単にはいかない。サーキットアスファルト上の気流は乱れているし路面の凹凸を完全に排除することはできない。直進する力の邪魔をする(この場合の邪魔とは直進を妨げるという意味)要素をあげればきりがない。だからこそ直進力を多少犠牲にしても安定性を得ることにも意味が出る。しかし安定は摩擦の産物だ。摩擦するからこそ安定するとも言える。ここでもトーにならんでもう一つのアライメント項目に「キャンバー角」がある。キャンバー角とはタイヤを今度を正面から見た時にすぼんでいるか広がっているかを決定する角度だ。前から見てタイヤが「ハ」の字になっているか「V」の字になっているかである。詳しくは次回以降の記事で別項目として取り上げるが、トー角と密接な関係にある。キャンバー角をハの字型に設定すると静止状態でタイヤは内側を中心に路面と設置している。逆にV字の時は外側になる。極端なハの字とV字をイメージしてもらえるとわかりやすい。そのままの状態で走り出せばハでは内側、Vでは外側だけがすり減っていくことになる。このイメージをそのままトー角とブレンドしてみて欲しい…。頭の中に上から見てハの字になるトーインと、正面から見てハの字になるポジティブキャンバーと組み合わせて、その状態のまま車を前に走らせる時にタイヤにかかる力はどうなっているだろうか…。これについては次回ということにしよう。ここで単純に摩擦が発生していることだけを取り出して考える。

摩擦は悪者なのか。

 貿易摩擦、経済摩擦…。摩擦は取り除くべきものなのか。
 摩擦が厄介なのは、エネルギーを熱に変えロスしてしまうことだ。熱から作り出したエネルギーを熱に戻してしまう。熱の発生源はタイヤである。タイヤ表面が路面と擦れ、熱を発生する。しかしながらタイヤにとって適量の熱は必要不可欠な要素である。タイヤは定められた温度で機能するように作られている。これはそもそもタイヤは熱くなるから、それなら熱くなることを前提に能力を発揮するようにしようという発想から来ている。だからタイヤには適度な熱量が必要なのだ。温度が低すぎては機能しない。そのため装着前のタイヤはウォーマーで温められるし、ドライバーはフォーメーションラップでわざとゴシゴシとタイヤを擦り付けるようにステアリングを操作するのだ。トーイン状態では直進するだけで摩擦が起こりそこに熱を発生させる。タイヤが暖まりにくい天候やサーキットではタイヤに熱を入れるためにトーインが利用されることもある。乾布摩擦という言葉を思い出した。

(3)へ続く
 

コメント

タイトルとURLをコピーしました