(ゲームの世界の)F1のセッティング part 7(『トー』のお話)その3

F1ゲーム

日々、最前線で働いてくださっている全ての医療従事者、その関連会社の皆様に、敬意と感謝を申し上げます。(2020.04.25追記)

乾布摩擦から学んだこと。

 先回の記事を「乾布摩擦」という言葉で締めくくったが、よく考えてみると随分長い間この言葉を聞いたこともなければ使ったこともなかった。久しぶりに頭に浮かんだ訳は自分でもわからない。私の中に出てきた「乾布摩擦」。自分本位になってはいけないが、現代の若者たちの中にこの言葉を知っていて、実践したものが一体どのくらいいるだろう。(おっさんvs若者という対比構造を持ち出すこと自体が…)
 「乾布摩擦」には絶妙な力加減とスピードが必要なのだ。いや、その前に「乾布摩擦」を簡単に説明しておこうか。乾いたタオルで擦ることで体を温める防寒方法である。筆者は小学生のころ運動場でみんなで行った記憶がある。さてこの「乾布摩擦」にはコツがいる。想像してみて欲しい。乾いたタオルで腕をゴシゴシと擦る。同じ場所を数度擦るだけで痛い。その痛さの源は摩擦による熱だ。また速く動かせば動かすほど熱が発生し痛い。寒さ対策を通り越して怪我をするレベルだ。だからコツがいるのだ。同じところを擦りすぎず、スピードは速すぎず遅すぎず。摩擦量と擦る場所をコントロールして初めて心地よい温かさを得ることができる。摩擦量と擦る場所…。先回のテーマである「トー」とこの記事で紹介する「キャンバー」は摩擦と擦る場所のコントロールなのだ。

トーのおさらい

 まずは先回の記事をご覧いただきたい。トーは上から見た時のタイヤの傾きで、通常フロントは外側に広がるトーアウトに設定され、リアはその逆のトーインに調整される。外に広がっている方が車がコーナーへスムーズにアプローチしていくことができるからだ。そして内向きの力はリアタイヤにブレーキング時の安定をもたらす。リアタイヤはデフの調整やサスペンションの設定など調整項目が多く、走行中の動きも一番激しい箇所だ。動力が集中する場所なのだから。
 マシンセッティングは車の運動の制御であるが、それに加えてタイヤの角度に関わる「トー」と「キャンバー」は「摩耗」の制御でもある。

フロントタイヤで考える

 フロントタイヤは「トーアウト」に設定する。タイヤは外側を向いており直進時にはタイヤの外側に一番大きなストレスがかかる。トーの角度はコンマ何度の調整だが300キロで数十周走れば当然そのコンマ何度から生じるストレスはタイヤを磨耗させ、その偏りは次第に大きくなる。コーナーリング時には外側を向くタイヤはスムーズな回頭性をもたらすが、直進時は抵抗でしかない。摩擦で発生する熱はタイヤの適正温度の維持に奏功することもあるが偏った摩耗は歓迎されるものではない。そこで少しでも満遍なく磨耗させるためにはタイヤの内側にもストレスがかかるようにバランスをとらなくてならない。誤解を恐れずにいうと、「キャンバー」角をネガティブに設定することでタイヤの内側をより路面に接地させるにである。ネガティブキャンバーとは正面から見た時にV字なるように調整することであり、その時はタイヤの内側が地面に接地する。トーアウトでタイヤの外側、ネガティブキャンバーでタイヤの内側に荷重がかかりタイヤの磨耗、熱の入り方はバランスされるのである。

キャンバーはトーのアンチテーゼではないよ

 本来の目的はトーの調整で生じた偏りを是正するためではない。むしろコーナー時の遠心力でタイヤの設置面積が小さくなるのを補正するのが目的である。キャンバーをつけずに真っ直ぐに設定されているとコーナーで車が傾いた時(わかりにくい場合は電車がカーブする時の動きをイメージしてみて欲しい。地面に垂直のままにカーブする電車はほぼない。車体をまだる側に傾けて曲がっていく。人間が走る時も同じで、スピードが出ている時ほど体はコーナー側に傾いている。)タイヤはコーナー側(内側)に力が掛かり外側が軽く浮き上がり設置面積が少なくなる。だからあらかじめコーナーでの傾きを計算に入れてタイヤに角度をつけておくというわけだ。
 それではどのくらい見込みの角度をつけておくのか。トーの設定とも関わる。サーキット特性は最も大きなファクターであることに間違いはない。そしてサスの柔らかさや車体の前傾角度(レーキ)、重量配分などタイヤと路面の関係は車両全ての設定が影響する。力は全てタイヤが受け止めているので当然である。しかし、セッティングには背反するものが多い。トーインは旋回性能を上げるが磨耗をもたらし、デフは直進性を高めればコーナーでのタイヤの動きを苦しめる。セッティングはできればこれらの背反する項目が少ない方がいい。ピレリのワンメイクとなって久しい今日のF1では、フロントタイヤのキャンバーは通常あまり変更せず、ピレリの推奨値をもちいているようである。

 暖冬で忘れかけていたけれど、乾布摩擦なら今でも上手に出来るのに…。

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