(ゲームの世界の)F1セッティング part 10 ブレーキのお話 その1

F1ゲーム

日々、最前線で働いてくださっている全ての医療従事者、その関連会社の皆様に、敬意と感謝を申し上げます。

ここで一つ質問。
 「自転車の左のブレーキを握ると、前後、どちらのタイヤにブレーキがかかりますか。」

 日本では左のブレーキが後ろのタイヤを制御すると決められている。しかしながらスポーツタイプや海外メーカーの自転車も増え、現在では左右が逆の自転車も市場には混在している。

 筆者は左利きということもあって、左のブレーキの方を強く握っている気がする。左は後ろのタイヤを制御しているので、後ろのタイヤを制動していることになる。もちろん右のブレーキで前輪を制御しないわけではない。ただなんとなく感覚として左を強く握っている気がする。

 右か、左かはさておき、私たちは無意識のうちに左右のブレーキを使い分けている。どんな場面で、どれくらいの力で左右のブレーキに伝える力を変えているのか、筆者には説明ができない。

 さぁ、今回はブレーキバイアスの話だ。

自転車のブレーキ考察(コレいるか?)

 もう少し自転車を例に話をしよう。筆者は自転車好きというわけではないが、玄関にはロードタイプの自転車を壁掛けしてみたり…。以前は週末に短距離サイクリングを楽しんでいたが、長くは続かなかった。壁にかけているのはちょっとお洒落でカッコいいからだが、ホコリを被っているのが現実である。
 
 自転車のブレーキは右手、つまり前輪で制御するのが基本である。

 ブレーキをかけると何が起こるのか。ブレーキを握るとワイヤが引っ張られる。ワイヤの先はタイヤを左右から挟みつけるリムブレーキにつながっていて、ワイヤが引っ張られた分だけ左右のゴム(ブレーキシュー)がタイヤを挟み付けて制動する。前向きに運動していた「タイヤ」に「止める」という力が加わる。重要なのはこのブレーキを握ったとき、「止まろうとする」のはタイヤだけということだ。それ以外のものは慣性の法則に従ってそれまでの動きを継続しようとする。説明するまでもないが、電車やバスがブレーキをかけると前につんのめりそうになる、アレである。

 右手で前輪のブレーキをかけると自転車は止まろうとする。いままで前向きの力を受けていたタイヤ以外の部分はそのまま前に進もうとする。自転車全体が前のめりになり、自転車本体の重量と乗っている人の体重にスピード分が乗算され前のタイヤに加わる。前輪は路面に対して押し付けられ、前に進もうとする力を押し殺す。この時の前輪は、ブレーキシューに挟み込まれて押さえつけられているが、前に転がる動きを完全に止めているわけではない。そもそもブレーキに伝える握力とワイヤが引っ張る力だけでは、タイヤを挟み込むブレーキシューに時速十数キロで転がるタイヤを一気に時速0キロメートルにするだけの力を加え続けるのは不可能である。もしブレーキシューがタイヤをギュッと挟み込み一瞬で速度を0にできるとしたら、ブレーキシューは車輪のリムをすり減らし、またタイヤは路面と激しく摩擦し煙をあげるだろう。そして結果、私たちの体は自転車前方へとすっ飛ばされてしまうだろう。そうならないために、というかそうができないので、ブレーキシューは回転するタイヤを挟み込み、摩擦分だけ車輪が前に進む力を奪いながら徐々にその力を弱めていくのである。回転しながら止まっていく、止めていくのである。F1好きの皆さんなら、この時点で想像していただけると思う。時折、前輪をロックさせスモークを上げるマシンの姿を。

ブレーキが前輪ありきな理由

 自転車や自動車のブレーキは前輪によるところが大きい。それは先述のように、止まろうとする力は前のめりの運動を発生させる。そのときの力は全て前輪にかかることになる。前輪が踏ん張ることで運動が収束するのである。だから前輪を押さえつける方が手取り早いのだ。後輪にブレーキをかけた時の動きを想像すると理解の助けになるだろう。後輪にブレーキをかける。後輪の転がる力はブレーキシューが(正確には自転車の多くは後輪にバンドブレーキを採用している。)タイヤを挟みつけることで減少する。その時、自転車本体や操縦者は慣性の法則に従って前のめりになり、その重量分の力を前のタイヤに、正確にはタイヤと路面との接面に加わっていく。この前輪にかかる力はタイヤを路面に押し付け、一定の摩擦を発生させて運動エネルギーを熱エネルギーに変えて制動する成分と、転がり続ける前輪に対して、さらに前へと転がり進める成分とに大まかに二分されるのがお分かりいただけるだろうか。筆者の文章力では、残念ながらイメージを言語化する限界に近づきつつある。メゲずにやり遂げる。前輪にはブレーキの力が加わっていないため、回転を続けるタイヤを静止させるために直接働きかける力は存在しない。ここにロスが生じるのである。つまり制動するときに自転車全体の重量がのしかかる前輪に対して、その回転を止める力を加えることが制動への一番の近道なのである。

 しかし、そう旨いことばかりではない。ブレーキをかけるとともに全重量が前輪にのしかかるとタイヤは物凄い力で地面に押し付けられ扁平する。急激に加わる力は前輪が回転する力を奪いロック状態になる。タイヤの素材であるゴムは路面との摩擦で発生する熱に耐えかねて白煙を上げる。ロックしているタイヤの路面に接する一部分にさらなる熱が加わり部分的にゴムを溶かしてしまう。フラットスポットだ。真円のはずのタイヤが摩擦熱で溶けて平坦化し、タイヤの持つ制動能力を弱めてしまう。F1に代表されるレーシングカーはスピードが違う。回転数が違う。ブレーキの強さも、そのときにかかる慣性力(荷重)も半端ではない。自転車では決して起こらないようなこのような現象が発生するのである。だから後輪にもブレーキの仕事を分担させ前輪だけにかかる力を分散させるのである。自動車には、自転車やバイクのように前輪と後輪のブレーキをそれぞれ操作するための装置がついていない。ブレーキペダルは一つだ。だから、このブレーキペダルに足をかけたときに、前輪と後輪に力を配分する必要があるのである。

 自転車には右と左にそれぞれブレーキがある。普段は意識をして使い分けてはいない。両方の配分を考えながらブレーキしていないが、脳は体の感覚器から入力される様々な情報を解析し、心地よい体験となるように左右の手に信号を送りブレーキをかける。運動の自動化だ。優れたアスリートは考えるよりも前に体が動く。ボルトが100mを9秒半で駆け抜けるときに、いちいち膝の角度や腕の振り幅、設置する足首の角度を考えているわけはない。全て自動化されているのだ。それも恐ろしく緻密に。

次回に続く

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