(ゲームの世界の)F1セッティング part 11 ブレーキのお話 その2

F1ゲーム

ブレーキの話の続きをしよう。

 4輪車の場合、ブレーキはそれぞれのタイヤについている。もし私たちが4つのタイヤのブレーキをそれぞれ個別に、それも完璧に制御できるとしたら、最も効率的に、効果的に車を制動することができるだろう。しかしながら、二本と足と二つの手ではそうもいかない。ブレーキペダルはひとつだ。しかし悲観することはない。一つのブレーキペダルは、長年の経験の中で導き出された最適解なのだ。

 F1をはじめとするレーシングカーにおいて、「制動」という言葉が持つ意味は本来のそれとは少し異なる。「制動」するのは各レースで1回、もしくは2回のピットストップ時、そしてアクシデントの際に車を止めるときに限られる。それ以外は常にマシンを前に進めることが優先されるのだ。直線のあと、ブレーキングをしてコーナーへ切り込んでいく時も、車を「止める」ためにブレーキを踏むのではない。むしろその逆だ。車を前に、コーナーへと向かわせるためにブレーキを使うのである。

 それでは、車を進めるための必要条件は何か。

 それはタイヤが回転していることである。

ブレーキの意味

 ドライバーがブレーキを踏むのは、「曲がる」ため以外にはない。速くコーナーを抜けるためにブレーキを踏むのである。決してタイムを落とすためではない。しかしブレーキはやはりブレーキ。車速は落ちる。タイムも落ちる。コーナーを速く曲がるためのブレーキは、一つ間違えば必要な速度を失い、その分だけタイムを落とすことになる。ライバルに追い越され、置いていかれることになるのだ。だからこそブレーキングがタイムを縮める鍵であり、ライバルに勝利する鍵であるといえる。

 ブレーキは4輪についているが、4輪を独立させて制御することはできない。「F1 2019」では前後のブレーキバランスのみを設定可能だ。ブレーキバランスは走行中も設定値を変更できるため、筆者はハンコンに割り当てている。(実際に数値を変えている余裕などほとんどない。)

 タイヤが回転しているときに車は進んでいる。ブレーキはタイヤの動きを止める操作だ。激しくブレーキを踏み込んでタイヤを完全に止めてしまうと、タイヤがロックした時に働いていた力の方向に、車はタイヤを激しく摩耗させながらズルズルと滑っていく。曲がれない。逆に、タイヤがフルパワーで直進しているとき、タイヤのグリップは100%前に進むためだけに使われている。このとき思いっきりステアリングを左右どちらかに切れば、タイヤそのものが抵抗となりマシンはスピンする。だからタイヤが回転し続けながら角度を変えることができるようになるまで、スピードを殺し制動する必要がある。しかし話はそう単純ではない。

どうやって曲がっているのか

 皆さんはコーナーが迫ってきたとき、どういう操作をして車を曲げているだろうか。ストレートエンドでブレーキを踏み必要なだけ速度を落とす、そしてコーナー進入速度になるとブレーキペダルから足を離してステアリングを操作しているだろうか。それともいったんブレーキを踏んでスピードを落とすが、そのまま軽くブレーキを踏み続けながらコーナーへ進入していき、「曲がれる」という確信を得たときにブレーキを離しているだろうか。はたまた…。

 これには答えがない。コーナーの大きさによって、あるいはドライビングスタイルの違いに拠るところもある。カタロニア・サーキットの4コーナーはブレーキングを残しながら走行ラインへとマシンを乗せる。出口が見えればアクセルを踏み込んで加速していくコーナーだ。それに対してモナコのロウズヘアピンはブレーキを踏んで速度を充分に落としたら、軽くアクセルを煽りながら抜けていく。(これはあくまで筆者のドライビング・スタイルであり正解ではないことを断っておく。)特にモナコはカジノコーナーからヌーベルシケインまでほぼ全てのコーナーが下り坂途中に設置されている。

 下りではマシンは頭下がりになっている。そこでブレーキを踏めば、前輪にかかる荷重は平坦なところでブレーキを踏む比ではない。下り坂の分が上乗せされる。その逆に後輪への荷重は抜けてグリップが弱くなっている。このときにブレーキバランスを前よりに設定しているとその傾向はより顕著になる。前輪にかかる負担増になる。だからバランスを少し後ろ寄りにとるのだ。それに対して、オールジュのような登り坂途中のコーナーは逆の発想をしなければならない。ただ前に進んでいるだけでも後輪に重量が乗っている。つまり前輪のグリップは極端に弱い。そのためハンドルを切ったほどにマシンは曲がってくれない。登り坂が故にアクセル全開で行きたいところだが、軽くアクセルを抜いて荷重を前にかけるなり、チョコっとブレーキを踏み車の向きを変える必要がある。実際にプロのドライバーがオールジュを走った際のテレメトリー(マシンに加えられた様々な入力値をデータ化したもの)を見せてもらったことがあるが、前輪に荷重をかけていると思われるチョコっとブレーキの入力を確認できた。いや、正確にいうと多分そうではないかと筆者が勝手に推察しただけである。

 ブレーキバランスもデフの設定とよく似ている。コーナーごとに最適値は異なり絶対の設定はない。だからこそデフと同様に走行中の設定変更が可能なのだ。そしてドライバーは多くのコーナーでブレーキバランスを変更している。

ブレーキ温度から設定値を探る。

 具体的にブレーキバランスをどのように設定するのか。一つの指標をお示しして一旦このトピックを締めたい。それはブレーキ温度だ。ゲーム内ではタイヤ、エンジン、ブレーキなどの温度をモニターする機能がある。筆者はこれをハンコンのボタンの一つに割り当てているが、このモニターでブレーキ温度を確認できる。ブレーキを踏むたびに4輪それぞれに備え付けられたブレーキディスクの温度が変化する。ブレーキバランスを色々と変更しながら温度の違いを確認してみるといい。また下り坂途中のコーナーや、その逆の登り坂途中のコーナーで、温度がどのように変化するかを是非確かめてみて欲しい。そしてまずは4輪のブレーキができるだけ均等になるように前後配分を変更してみることをお勧めする。そして何度も走ってみる。違和感を感じたらバランスを前後どちらかに少しずつ変えながらまた走ってみる。この繰り返しで自分点を見つけるのが良い。そのためにはまずはコースを安定して走れるスキルを身につけなくてはいけない。そのスキルが身につくまではバーチャルドライバーの気分を味わえる程度に、数値を変化させて楽しむのも一興である。私たちはプロではない。

 

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