レースゲームはオンライン対戦が面白い。筆者も『F1 2020』の発売を機会にリーグ戦に参加させていただいている。実のところこれが初めての本格的なリーグ参戦である。これまで自分のスキルに自信が持てず、迷惑をかけるのではないかと二の足を踏んでいた。スキルは相変わらず低迷しているが、新作が出て新しいリーグが立ち上がるこの時期を逃すと、参加へのハードルはさらに高くなる一方なので、腹をくくったというわけだ。一緒に遊んでくださっている皆さん、改めて感謝しております。
そんな筆者であるが、実際には一人でプレイする時間のほうが圧倒的に長い。普段はコンピュータがライバルである。そこで皆さんに問いかけたい。
「みなさんは、AIライバルに何を求めますか?」
コンピューターを相手にレースをする際に、みなさんは何を重視されるだろうか。ライバルをブッちぎってスカッとストレス発散も良い。緊迫したポディウム争いも面白い。弱小チームのドライバーになってポイントをチームに持ち帰るのもモチベイティブだ。これら以外にも、それぞれの楽しみ方があることだろう。
いずれを好むにしろ、AIドライバーのスキルの調整、ゲーム全体の難易度をうまく設定することが大切になる。ここが決まらないと、ブッちぎりたくもないのに圧勝して興ざめしたり、逆にポディウムを争えるはずの常勝チームのドライバーなのに、レース後方を走るというリアリティに欠ける展開になり、ゲームに向かう気力が削がれる。さらに数年前まではCPUの計算能力も乏しく、難易度の調整をしたところで思い通りのレース展開にはならいことも多かった。しかし近年ではCPUのメニーコア化が進み、それに伴いAIも格段に賢く、速くなった。
CPUの高性能化に伴い、AIレベルの調整も細かくできるようになっていく。ひと昔前は、「レジェンド」「エキスパート」「ハード」「イージー」などとざっくりと分けられていたものが、筆者が好んでプレイしている『F1 2020』や『アセットコルサコンペティツィオーネ』(以下ACC)では、1%単位で設定できるようになった。特にACCではAIの攻撃性(aggressive)も同様に1%刻みで設定できる。細かく設定できること自体は大いに歓迎するが、1%の違いの持つ意味は分かりづらい。78%と79%はどのくらい違うものなのか。直感的に、と言われてもピンとこない。79%と80%ならまだ何となく違いをつけることができるかもしれないが、本質的には何も変わらない。
そこでACCのチャンピオンシップ・モードを開始するにあたって、AIスキルの検証を行うことにした。検証にはGT4クラスのスプリントレースを用いた。先月発売されたばかりのDLCだ。余談になるがPCゲームはDLCを購入することでゲームに新しい要素を追加することができ、長く楽しめるのもいい。これは長らくPCの専売特許だったわけだが、コンシューマーゲーム機でも増えてきた。よりPCライクになると予想されるPS5ではPCと変わらないDLCのサービスが期待できるだろう。
さて検証に話は戻る。
サーキットはイタリアのモンツァを使用する。ここは直線をシケインでつないだ超高速サーキットだ。テクニカルな低速サーキットとどちらが検証に向いているのかわからない。今回の結果から概ねAIの傾向を知ることができたので満足しているが、次の機会にはテクニカルなサーキットでさらなる実験をしてみたい。
ACCは環境シミュレーションに優れており、天気、風向、気温、そして路面温度が互いに影響しあっている。例えば同じサーキットでも日なた、日かげで路面温度が異なるというこだわりようだ。したがって検証に際しては気象条件を揃えた。デフォルトの「晴天(Clear)」を選択した。その結果、気温は29度、路面温度は38度であった。もちろん無風。
次に出走台数を初期値の15台から10台(筆者を含めると11台)に減らした。いったん15台で始めたのだが、AIの走行を見ていると、トラックが混雑する時間帯があり、影響を受けたドライバーがベストタイムを更新できない状況が見られたためだ。できるだけAIドライバーのポテンシャルを調べたかったので、レース戦略などに左右されない予選ラウンドでのタイムアタックを使用することにした。時間は15分。モンツァなら6周はアタックできる。筆者はピットに留まりトラックの状況と各車のタイムテーブルをチェックする形で検証を進めた。
最初はAIのスキルを100%に設定した。この設定での最速ドライバーは「1:57.780」でモンツァを駆け抜けた。最も遅いドライバーでも「2:01.005」で走行している。ちなみに筆者の平均タイムは「2:01.509」だ。100%では話にならない。次に95%に設定してみた。最速は「1:59.514」。上位4人が2分を切っている。最遅は2分2秒台だが、それ以外のドライバーは2分0秒台に収まっている。かなり手強いし、筆者のタイムでは勝負にはまだまだ遠い。
ここで筆者のスタンスを明らかにしておきたい。フライトシムもこよなく愛する筆者は、ゲームにできるだけリアリティを求めるタイプだ。そしてブッちぎりで勝ってスカッと喜ぶというよりは、中堅チームを使って分相応のタイムで走り、チャンピオンシップ争いでなんとか上位を窺うような遊び方が好きだったりする。もちろん難易度100%のAI相手に勝ちきれるようはスキルを身に付けたいが、そのスキルを発揮する場はオンラインレースに求めたい。そんなスタンスで遊んでいる筆者にとって、AI95%は厳しすぎる。
難易度を更に下げて90%で検証してみた。ぐっとレベルが下がった印象を受ける。最速は「2:02.148」。2秒台が5人、3秒台が4人という結果だ。この集団の中ではおそらくかなりの確率でトップでチェッカーを受けそうだ。これでは少しつまらない。そこで92%のタイムも計測した。最速は「2:01.071」だった。筆者の平均タイム「2:01.509」なら6番手となる。これならうまく決まれば表彰台も見えつつ、少しぐらいの失敗ならトップ10にとどまれそうである。どうやら92%で始めるのが良さそうだ。
難易度 | 100% | 95% | 90% | 92% |
P.P | 1:57.780 | 1:59.514 | 2:02.148 | 2:01.071 |
2 | 1:58.035 | 1:59.661 | 2:02.217 | 2:01.221 |
3 | 1:58.152 | 1:59.673 | 2:02.220 | 2:01.305 |
4 | 1:58.350 | 1:59.928 | 2:02.244 | 2:01.374 |
5 | 1:58.971 | 2:00.096 | 2:02.484 | 2:01.380 |
6 | 1:58.983 | 2:00.342 | 2:03.120 | 2:01.962 |
7 | 1:59.106 | 2:00.489 | 2:03.129 | 2:02.103 |
8 | 1:59.475 | 2:00852 | 2:03.462 | 2:02.313 |
9 | 1:59.541 | 2:00966 | 2:03.489 | 2:02.646 |
10 | 2:01.005 | 2:02.457 | 2:06.102 | 2:04.551 |
100%―95%間のタイムも気になるところだが、楽しくプレイするためにはトップ10あたりには収まっていたいという考えもあり、今回は95%以上の測定を見送った。それぞれの%において最遅が9位のタイムとは大きく溝を開けられているのも気になる。一人だけ際立って未熟なドライバーがいるのだろうか。真相はもう少し検証を進めないとわからないが、筆者の予想は次のとおりだ。おそらく15台以上、あるいは20台くらい出走しても、最遅は今回の計測値に近いのかではないだろうか。なぜなら最遅を設定しておかないと、難易度調整の際に出走台数というもう一つのパラメーターを考慮に入れる必要がでてき、設定がより複雑なものになるからだ。
今回はゲームを始めるにあたってスタートとなる難易度を設定するために簡単な検証を行った。今後、レースの結果、スプリントや耐久といったレースの種類、マシンのカテゴリーなどによる違いをチャンピオンシップ・モードでプレイしながら、時間を見て改めて検証してみたい。
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