FANATEC “Loadcell Kit”が面白い

FANATEC

 今日はペダルユニットをアップグレードしてみよう。

 紹介するのは “CSL Elite Pedals Loadcell Kit” 。お値段は16900円(税込)なり。この商品はCSL Elite Pedalsの拡張キットで、ロードセル方式のブレーキペダルを追加するものだ。

ロードセル方式とは??

 ロードセルとは、荷重を電気信号に変える方式である。身近なところでは体重計に利用されている。昔のアナログ体重計は、てこの原理で値を示す針を動かしていたが、現在主流のデジタル体重計では、重みを電気信号に変え数値化している。

 この”CSL Elite Pedals Loadcell Kit“は、ロードセル方式のブレーキペダルである。ブレーキペダルを踏み込んだ際の力の入れ具合に応じて、ブレーキの効きが増減する。つまり強く減速させたい時には、強く踏み込めばよいし、荷重移動のためのブレーキならちょこっと軽くペダルにさわれば良い。標準のCSL Elite Pedalは、アクセル、ブレーキともにポテンショメータ方式のペダルを作用している。これは回転角や移動量を電気信号に変えるもので、ブレーキであれば、ペダルを踏み込んだ量に比例してブレーキのかかり具合が決定する。大抵のハンコンに付属するペダルユニットはこの方式を採用している。アクセルは開度で調整するため、ポテンショメータに向くがブレーキはそうではない。ポテンショメータ方式では、どこまで踏み込んでも「重み」はない。従ってCSL Elite Pedalsでは硬いウレタンを挟むことで踏み込んでいった際の「重み」を擬似的に再現しているのである。これが曲者で、ウレタンの縮み具合は正確に一定ではないため、同じ力でブレーキを踏んでいてもウレタンの気まぐれで力加減にブレが生じるという欠点があった。
 ロードセル方式ではこの欠点が最小限に抑えられている。圧力を感知する素子も、やがては度重なる圧力に耐えかねて劣化し変形を免れない。しかしそれはあくまで経年劣化であり、構造上は入力に対して一定の値を返すのである。

CSL Elite Pedals Loadcell Kit“のインストール

 このキットは標準のペダルに新たなペダルを一本追加することになる。そのため、ブレーキとして使用していた標準ペダルは取り外すか、あるいはクラッチペダルとして利用することができる。筆者は設置環境から取り外して2ペダルのまま使用している。
 ペダルを追加することになるのだが、それに応じて電子モジュールも交換することになる。従来のモジュールにはアクセル(GAS)とブレーキペダルの2入力のみであったが、このキットに付属するロードセル用モジュールはクラッチとハンドブレーキを加えた4系統の入力端子をもつ。さらに感圧の閾値を設定するためにUSBでPCと接続する必要がある。(下図)

公式マニュアルより転載


 さらに、キットにはペダルの奥側を連結させるためのスタビライザー・バー(公式名称)が付属する。マニュアルではこのバーの使用が推奨されており、ペダルユニットを固定する設置面をもたない場合には取り付ける方が良いだろう。筆者は先日コックピットフレームを自作した(記事参照)が、ペダルユニットを前方と後方の合計4箇所でフレームに固定しているため、このスタビライザーを使用していない。ちなみに固定するためのボルトは付属していない。(マニュアルにも記載されている)

カスタマイズと初期設定

 FANATECの製品はカスタマイズと個別最適化に長けているのも特徴だ。ハンコンの種類は豊富、グリップ部分やボタン類、パドルのサイズなどを組み換えることができる。このペダルもプレートの表面材を2種類に組み換えることが可能である。紙やすりのようなザラザラしたプレートと、シューズの底のような凹凸のある2種類が付属する。筆者は購入時に付けられていた凹凸のものをそのまま利用している。シューズはまだ所有していないので、靴下のままプレイしている。

 つぎに設定だ。まずはドライバーをインストールしてプロパティーを開き、感圧の閾値を設定する。

  ここでは「Brake」の設定に限って説明しよう。ブレーキを踏み込むとそれに応じて青色のバーが伸びていく。またインジケータ左側のメモリで入力のセンシビリティを設定する。筆者は50に設定している。ためしに100にしてみたが、思いっきり踏み込んでもインジケータが100%になることはなかった。それどころかようやく半分に達するかという有様で、とても実用的とは言えなかった。60まで下げると思いっきり踏み込めば100%に達するが長時間のプレイには向かないのと、繊細な入力を難しくするために少し余裕を持たせている。
 具体的に説明しよう。図にはないが、設定画面では「max」と「min」の設定が可能である。まずはペダルを思いっきり踏み込む。たとえインジケータが100%に達しなくても、その時点で「max」ボタンをクリックすれば、その値を100%ととして設定できる。センシビリティを仮に100にして、思いっきり踏み込んだ時点で「max」をクリックすればそこが100%となるのである。この場合、入力の幅が狭くなり、力加減には繊細な踏力が必要となる。その逆でセンシビリティを低めに設定しておくと、それだけ入力に幅ができシビアさは緩和されるが若干ダルになる。筆者はセンシビリティの値を徐々に下げていきながら、思い切り踏み込みギリギリ100に達しない時点で「max」とした。こうすることで0から100までの入力をコントロールできる。思い切り踏み込まないまま100に達するのでは90から100あたりのコントロールが曖昧になるからである。うまく設定が決まり、シビアすぎずダル過ぎず好みのフィーリングを得ている。
 一方「min」側だが、これはいわゆる「遊び」の設定になる。実車ではブレーキにちょこっと触れただけでも入力があると危険が生じるため、通常は「遊び」を持たせている。ステアリングも同様で軽く左右にまわしても車が方向を変えることはない。実車では必須の「遊び」だが、レーシング界では実際にどのくらいが基準になっているのかわからない。1000分の1秒を争うことも稀ではない世界にあっては、「遊び」など不要なのかもしれない。それはさておき、このキットはうまく「遊び」を設定できる仕組みが用意されているので、筆者はそれに従って設定している。

 キットを横から見た図(青い矢印は無視で)である。オレンジの部分にはウレタンが挟んであり、入力の緩衝材となっている。ペダルを踏むと、まずは踏力は一番柔らかいウレタンを縮ませる。この時点では、ウレタンが全ての力を吸収しているため、力はセンサーに届かない。ウレタンが縮み切ると受け止めきれなかった力がゴム(青い部分)へと伝わる。ゴムは弾力で少し踏力を減少させながらセンサーへと力を受け渡す。このゴムの縮みが、ペダルが実際に動く領域を決定している。そしてセンサーは入力された力をデータへ変換しPCヘ送る。ウレタン部分が自動的に適当な「遊び」を作り出すのである。しかしながらウレタンの厚みはわずかで「遊び」も「遊び」と言えないくらいシビアなため、筆者はすこし余裕を持たせている。足をペダルに本当に軽くのせる。意識的に重みをかけないようにすこし膝と足首に緊張感を持たせた状態だ。この時点でもセンサーは反応し、ほんのわずかにインジケータに入力がある。ここで「min」をクリックして0に設定するのが筆者のやり方だ。すこし甘い設定かもしれないが、ある程度まとまった時間プレイするにはおっさんにはこのくらいがちょうどいい。

 ウレタンを挟み込むように配置するゴムは3種類の弾力のものが付属する。一番硬いものをすれば踏み込んでもペダルが動く幅はほとんどない。その分、足裏がそのままセンサーを踏みつけている感覚になり、より繊細なコントロールを可能にするだろう。上級者にはこちらが好みなのかもしれない。筆者には合わなかった。感覚だけではなく、実際の「動き」がないと操作にならない。ただ先述のように靴下でプレイしているので、ドライビングシューズなどを着用してペダルを踏むと、また違った感覚となることは想像に難くない。プレイする環境に合わせて微調整ができるのはさすがはFANATECだ。それもウレタンやゴムの弾力を利用しているところにセンスを感じる。メカニカルに解決する部分と、コストをかけずに相応の結果を得るところのバランスが実にいい。

お勧めしたいが、コックピットへの道は必至。

 ロードセルブレーキをインストールしてフィーリングは劇的に変化した。標準ペダルが悪いというわけではない。ただ、ロードセルを知ると、もう過去には戻れない。戻れないだけはない。同時にそれは突き進むしかない沼へ足を踏み入れることでもある。
 ロードセルへの入力(踏む力)は相当なパワーを要する。踏み込んだ瞬間にユニットごと前方に押し出されるか、自分の体が椅子ごと後ろへ持っていかれるかのどちらかだ。どちらにしてもまともなブレーキングはできない。ペダルユニットをうまく設置するために一刻も早く対策を講じなくてはならない。筆者はコックピットの自作に踏み切った。なんとなく覚悟はしていたが、目の前に鋼材でガッチリ組み上げられたフレームをみると、もう後戻りはできない。ダイレクトドライブやV3ペダルはいずれ手元にやってくるだろう。OSWもそう遠くはなかろう。そしておっさんが破産する日も…

沼は感圧式ではなく、抗力もなく引き込まれるままである。

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