テレメトリー環境を一緒に構築しよう(3) 新DLCイモラ(アセットコルサコンペティツィオーネ)

FANATEC

 11月18日に発売になったアセットコルサコンペティツィオーネの新DLC「2020GT World Challenge Pack」には新しいトラックに加えて、マシンが2台追加されている。そのうちの一台は筆者が普段から練習走行に使用しているMercedes AMG。この新しいマシンには新しいタイヤが装着されており、特性が異なっていると巷では噂になっている。さっそく新マシンに乗り込みイモラへやってきた。このサーキットも新DLCで追加されたトラックだ。走行データを解析しながら、テレメトリーの筆者なりの使い方を紹介しよう。と、その前に、過去の記事を是非ご一読いただきたい。

  1. テレメトリー環境を一緒に構築しよう(1)(アセットコルサ・コンペティツィオーネ)
  2. テレメトリー環境を一緒に構築しよう(2) ニュルGPコースを走ってみた(アセットコルサコンペティツィオーネ)

基本的な走行状態を分析する

 ドライビング・スキルが向上するほどに、自分の走りを客観的に理解できるようになるだろう。わかりやすいところでは、各コーナーで使用するギアは、安定したラップを刻んでいるときには、同じはずである。ブレーキングポイントも看板やコースわきのオブジェクトなどを目印に、自分なりのポイントがあるはずである。そのどれもが明確に言語化できるとは限らないが、周回を重ねれば、自分なりのフィーリングやリズムができてくるものだ。そして一定のペースで周回できるようになり、自分の狙ったタイムで走行できるようになってくる時、スキルアップを感じて悦に入るのではないだろうか。しかしながら、これが仇となることもある。「クセ」のように走り方が身についてしまうと、なかなか大胆に変えることはできない。一度、身についた走行ラインを外すことは、失敗を意味し、ブレーキングポイント遅らせることは、大きなミスへとつながる恐怖から躊躇われる。だからある程度タイムが縮まったところで頭打ちとなる。ネットのランキングボードには信じられないようなタイムが並ぶ中、自分のベストラップは一向に縮まらないのだ。理由は明白。同じ走り方をしていれば同じタイムが出るのである。

 ドライビングはデジタルとアナログが複雑に交錯する世界だ。車は物理法則に従って運動する。これはこの世に存在する以上、世界チャンピオンのハミルトンであろうと、筆者であろうと一切の違いはない。気象状況、路面状態、マシンの特性などを含めて、すべての要素が全く均一であるとするなら、サーキットを最も速く走る方法は厳密に一つしかない。その方法を完璧に実践できれば最速タイムを叩き出せるわけだが、アクセルの踏み込み具合やブレーキングの強弱、ステアリングの切り方など「人」が操作する部分はアナログであり、「ブレ」がつきものだ。加えて心理的な要因も操作に大きく影響を与える。プロは「ブレ」が小さく、限界点まで近づいていくタフなメンタルを持っているから速いのだ。そして自分の操作とマシンの挙動を感じ取り、結びつける感性にたけているのだろう。到底まねのできるものではないし、究極の次元への到達は到底不可能であるが、それはアナログの部分であって、物理法則の部分となると話は変わる。テレメトリーは自分では到底感じることのできない、自分の入力(操作)とその結果生じる物理的事象をデータとして示してくれる。これを利用しない手はないではないか。(まわりくどい表現だ)

 まずは次のデータをご覧いただきたい。

 このカラフルな折れ線は上から次のようなデータを示している。

  1. スピード
  2. ハンドル操作
  3. エンジン回転数
  4. ギア
  5. ブレーキ
  6. アクセル開度

 少しご覧いただきにくいが、それぞれのデータは、カラー(緑や赤)と白の二つのラインが微妙に重なって表示されている。データを取ったラップを任意に表示することができ、ここではカラフルなほうがこの時のベストラップ、1:44.662、白が1:45.087のものである。

45秒台の壁を破るための分析① ターン1~4

 さて、ここでは自分のドライビングの課題を「45秒台の壁を破る」と設定してみる。44秒台がベストラップではあるものの、なかなか安定して44秒台で走行できないのが悩みだ。45秒台はコンスタントに刻むことはできる。この二つの走行データを比べることで、44秒台を出すのに必要なドライビングを見つけ出したい。

 まずは2つのデータにみられる共通の部分からおおよその自分の走りを分析してみる。

 ターン1(スペースの関係でうまく表示されていないが、図中の最上部の「ターン3」の左側の二つの空白の一つ目が「ターン1」、二つ目が「ターン2」である)への侵入でフルブレーキングしている。いったん減速してから次の「ターン4」に向けてスピードが上昇していることから、「ターン2」と「ターン3」は加速しながら抜けていることがわかる。上から2つ目のデータはステアリングの切角(上に山が左、下に山が右)を表していて、山の出方がなだらかであることから、この連続コーナーは急激なハンドル操作を行う必要のない比較的緩いコーナーであることを示している。

 続いて黄色は使用ギアを表すデータだ。44秒台も45秒台も変わらず同じギアを使用している。ターン1から3を抜けてターン4まで、使用しているギアは2つの走行データともに同じだが、44秒台を出したベストラップの方は、ターン3から4へ向かう直線区間において「3速」で引っ張ている距離が長い。一つ上段の紫色のデータはエンジン回転数を示すが、使用するギアに対応して同区間でギアを一つ上げたことにより、いったん回転数が下がっている(白い線)ことが読み取れる。スピードのデータでは特に大きな差が表れていない。

 データの折れ線上にマウスカーソル合わせることで黄色いラインを移動させることができる。この図ではターン1のエイペックス付近を指示しているが、その時、データ上段にはその時の緑と白のそれぞれのスピードとその差が表示される。ベストラップ(緑)の118.8km/hに対して、45秒台のラップ(白)は113.6km/hであり、その差が5.2km/hだった。ここでの改善点はターン1の通過速度ということになる。ただしスピードが減少し始めている点(図中「113.6」あたり)に注目すると、緑と白のラインがきれいに重なっている。つまりブレーキングポイントはぴったり一致しているということだ。

そこで確認しなくてはならないが、同区間におけるブレーキングのデータである。ブレーキの踏み始めの山の立ち上がり方を見ると、紫は垂直に近い。それに対して白は少し右に傾いている。山のてっぺんは潰れているのはフルブレーキングを示す。紫が最短距離で山頂に向かっているのに対して、白は少し遅れている。踏み込みが甘いということだ。よって少し長めにブレーキする必要が生じた結果、山の下り側では少しだけ右側に白がはみ出している。その分速度が下がり、またターン2以降を抜けるスピードが下がったというわけだ。

 このようにターン1への侵入と脱出時のデータを見ると自分のドライビングがよくわかる。結論から言うと1コーナーへの飛び込み時のブレーキングが甘かったということだ。では、どのようにして改善するのか。方法は2つある。ひとつは自分の操作。ブレーキングをもっと力強く行うことだ。そしてもう一つはセッティングに変更を加える方法である。セッティングに関してはまた別の機会にまとめていこう。

45秒台の壁を破るための分析② ターン7

 さて、もう一か所検討しておこう。「ピラテッラ」と名付けられた左コーナーだ。

 緑のデータと白のデータでは、どちらがうまく走れているだろうか。まずはコーナー最低速地点では白の130.1km/hに対して、緑は122.6km/hである。コーナー出口からの加速も鈍い。グラフ下段のステアリングの操作も赤のグラフから大きくハンドルを切っているのがわかる。白も決してきれいな線形ではなく、ステアリングを微調整しているのを示すが大きな速度低下には至っていない。ここは45秒台の方がよい走りをしているといえる。

 このコーナーは上りながら大きく左に旋回していて難しい。コーナー出口でアウトに膨らむとトラックリミット(トラックはみだしによるタイム取り消し)のペナルティ対象区間があり、アウトに膨らんで抜けていくのはスキルとともに思いっきりの良さも試される。また上りながらのコーナーはブライドになりカーブの大きさがわかりづらく、必要以上に減速してしまいやすい。それらが一度に出てしまった感じである。

 さらに同区間の「ギア」、「ブレーキ」、「アクセル開度」の項目も併せてチェックすることで原因がより鮮明に見えてくる。一目見てわかるのが、ブレーキングだ。明らかに紫のデータはブレーキの遅れを物語っている。それにあわせてシフトダウンも遅れている。突っ込みすぎたことによって「まわれない!」という焦りが、ステアリングを必要以上に切らせる結果となり、上の図で見た大きな山を作ってしまったのだ。ステアリングを大きく切っている分、アクセルを踏み込むタイミングも送れていく。最下段のグラフの白いラインは赤よりも早く立ち上がっているし、谷の間隔も赤に比べて白の方が狭い。これはアクセルを休めている時間が短いことを示している。これらのデータがしめしているのは、45秒台の走行の方がこの区間をより速いスピードで抜けていたということだ。

テレメトリーで分析することで、課題が見つかりよりゲームが楽しくなる!

 もう一度今回の走行データの全体図をご覧いただきたい。

 最終コーナーにも大きな走行の違いがみられる。そして全体的な傾向として、各コーナーの立ち上がりの局面において、白いラインが緑のラインの少し右側にずれているのが確認できる。これは立ち上がりにおいて、スピードをうまく乗せられていないことを示している。脱出時に思いっきりよくアクセルを踏み込めていないのだ。それはタイミングの問題だけではないかもしれない。ハンドルを戻すスピードや、リアタイヤのグリップ不足を感じているのかもしれない。リプレイを観ながら自分がどんな操作をし、マシンがどのようなリアクションを取ったのかを確認しながらデータと照らし合わせて考察するとより効果的なのは言うまでもない。

 テレメトリーをうまく活用することで「フリープラクティス」というゲームモードの面白さが何倍にも膨れ上がる。それはただ周回を重ねるだけの練習走行ではなく、自分の走り方やマシンの特性を知る絶好の舞台となるのだ。3周走行してピットに戻りテレメトリーを分析して次の課題をもってさらに3周走行する。そしてまたピットに入る。脳内のエンジニアとディスカッションしながらレース本番へと向かっていく…。筆者のようなレース好きの皆さんなら、この楽しみ方を共感してくださることだろう。

 さて、シリーズは続く。もう少しテレメトリーを使って自分のドライビングを可視化していこう。

 走行の様子はYouTubeでご覧いただけます。こちらから。

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