FANATEC DD1の本気レビューその1:購入の理由

FANATEC

 2020年12月、筆者のコックピットにFANATECのDD1(日本公式サイトへリンク)がやってきた。コックピットを新調するか、ペダルを買い換えるか、それともダイレクトドライブか。10月末からひと月以上考えた結果、筆者の得た結論はDD1の購入だった。コックピットを新調しなかった理由や、一度購入しかけたV3ペダルをキャンセルした理由はまたの機会に紹介するとして、ここでは『「FANATEC DD1」の本気レビュー』と題して「DD1」のことを「その1」と「その2」の2回に分けてたっぷり書いていこうと思う。読者の皆さんの中には筆者がCSW2.5から乗り換えた理由、巷で人気急上昇のSimCube2 ProでもDD2でもなくDD1を選んだ理由について関心のある方もいらっしゃることだろう。それらは今ここで明らかになる。

ー 全てはDD導入を検討する愛すべきシムレーサー仲間たちのために

FANATECのホイールベースのラインナップをおさらい

 FANATECのホイールベースは2種類に大別される。モーターの力をベルトを介してステアリングに伝える「ベルトドライブ」方式と、何も介さず直付けする「ダイレクトドライブ」方式の二つだ。「ダイレクトドライブ」方式は一切の減速機構を持たないため高速性と応答性に優れている。つまりより強力なフォースフィードを滑らかに、時には激しく発生させることができるわけだ。一方、「ベルトドライブ」方式ではいくつかのギアとベルトを介するが故に、どうしても減速し、リニアな反応が損なわれるのである。ただしモーター自体のサイズを小さくでき、またモーター内部の機構も単純化できるためコストに優れている。

 FANATECのベルトドライブのフラグシップは筆者のブログでも紹介済み、ご存知CSW2.5である。ひんやりと冷たい金属製の筐体は強度は十分、左右のスリットが放熱性を高めるなど長時間の使用にも不安はない。ステアリングを装着する軸も2つの大きなプーリーも金属製で少しのガタつきはないし、使用していて心配になるような緩みや遊びも皆無だ。また天井部をシースルーとすることで頑強で精緻なメカニズムが動作する様子を見せつけるなど、製品としての完成度、魅力ともに高い。

CSW2.5は完成度の高い工業製品だ

 一方で廉価版のCSL EliteはABS樹脂製だ。鏡面仕上げの本体に安っぽさはない。フロントパネルにはシフトライトがついている。CSWの方には上位機種にもかかわらずシフトライトが付いていないのが不思議に思えるが、EliteシリーズのステアリングにはLED類がないため本体側で間に合わせているということだろう。放熱ファンは一つ。発生するフォースを考えればこれで十分なのだろう。今からレーシング・シムを始めるなら入門機には十分すぎるクオリティだ。

 もう一つのラインナップがダイレクトドライブ方式の「DD1」と「DD2」である。ベルト方式の2機種と違って外見上の違いはわずかに筐体の外側の取り外し可能なカバーにみる。「DD1」の黒い金属に対して「DD2」はカーボンファイバー・プレートになっているだけだ。プレートは内側に貼り付けてある磁石マットで本体に密着させてあり、走行中に強いフォースがかかっても外れることはないが、手で簡単に外すことができる。DD1の左右のプレートには白い文字で「FANATEC」のロゴが刻印されている。CS Eliteにも同様にロゴがついているが確か文字が一続きになったシールのような質感だったのに対して、DDはプラのような材質のパーツで一文字一文字貼り付けられていて高級感がある。


 性能差は発生するフォースフィードの強さ。最大トルクがDD2の25Nmに対してDD1の20Nmと5Nmの差がある。高負荷をかけ続けた時に維持するトルクも20Nmと15Nmとやはり5Nmの差がある。その他には保証期間がDD2の完全5年補償に対してDD1は標準の3年の補償。それ以外に数値として表記されている差異はない。ただ一点、今後発売される製品への互換性について、DD2にはDD1にはない文言「いかなる変更(修正)を必要とせず(英文中赤字)」が追加されている。
(参照)
「All existing and upcoming Fanatec peripherals fully supported without any modification.」

DD2ではなくDD1を選んだ理由

 DD1を選んだ理由とも言える背景は少々複雑だ。前回(2021.01.02)の記事で、筆者のシム環境アップグレードにはいくつかの候補があったことを紹介した。FANATECのV3ペダルを一旦購入しかけ、思い直してHeusinkveldのSim Pedals Sprintをポチりかけ、友人の思いがけないアドバイスに筐体とシートの購入を検討し、そしてブラック・フライデーのセールを気にしながらひと月近く考え抜いてDD1購入に至ったのである。
 DD1に決めたのはDD2との価格差(約4万円)ほどの性能差や魅力を感じなかったのと、4万円あればHeusinkveldのペダルユニット購入代金の半額分に充当できると考えたからである。←まだ買わないけど。

 この2つの性能差は主にトルクの違いだ。上記のように5Nmの差があるが、それまでのCSW2.5の最大トルクは8Nmであり、その倍以上のパワーを発生するDD1で十分と判断した。厳密には最大値が異なるだけはないようで、トルクの出かたがDD2の方がよりスムーズと分析する海外メディアも存在する。しかしDD2を使う機会がなければその感覚的な違いに気がつくことはないし、2つを比べたところでどこまで感じ取れるか自信はない。40代半ばの筆者の五感はどんどんと鈍くなっていく一方なのだ(悲しい…)。パワーを絞ってあるDD1でも、ダイレクトドライブという駆動方式が持つ高速性と高い応答性は十分に享受できる。実際に走行後には強烈なトルクで手首や上腕筋に明らかな疲労が残り、首や肩も強ばるほどの緊張を強いられている。大満足だ。
 ほかの違いは補償とキルスイッチが同梱しないことだ。DD2には5年間の延長補償がついているが、これも筆者にとってはあまり魅力的ではなかった。半年でCSW2.5からDD1に買い換えた筆者にとって5年はまさに悠久の時であり、きっとそれまでには別のホイールベースに買い替えることになると確信しているからだ。DD1にも3年補償がついている。4万円の価格差を埋めるだけの魅力にはならなかった。
 キルスイッチはどうだ?これに関しては海外YouTuberによるDD1紹介動画を参考にさせてもらった。動画中でさらっと「これまでにキルスイッチを使わなければならないような事態が起こったことはない」と言ってのけたのだ(英語で確かにそう言っていた!)。ベルトドライブでは到達しない絶対的強烈フォースを体験した者とすれば、ハンドルが大暴れすれば大怪我をしかねないと心底思えるし、決して軽く見ることはできないが、それでもキルスイッチを押す場面を想定できない。走行中のアクシデントあるいは操作ミスでウォールに衝突するなど、強烈で危険なフォースが発生する場面はたくさん存在する。アクシデントの直前に安全のためにキル(切る)スイッチを押して電源を落とし怪我するリスクを回避する人がいると聞いたことがある。その場面を想像してみると、キルスイッチを押すためにステアリングから手を離すなら、その時点で怪我をする可能性はほぼ消滅しているのではないか。手を離したとしても、ステアリングがガタガタ・ブルブルと狂ったように動く様を見たくはないが(ゲーム側の設定でマシンが止まるとフォースを発生させないというオプションが選べる)、それも本来裏のスイッチに手を伸ばしてスイッチを押すまでの、ほんのわずかな時間に過ぎない。電源の入り切りが手元でできるのは便利だが、4万円だすなら喜んで本体裏に手を回そうと思う。本体裏面に、「なんでこんなに控えめな」と突っ込みを入れたくなる小さな電源ボタンがついている。手探りではなかなかうまく見つけられないこともあるが、大きな問題ではない。最後に、これを言っては元も子もないが、どうしても必要になれば後で買い足すことができる。その時には初めからDD2にしておけばよかったと後悔することになるのだけれど。ちなみにキルスイッチのお値段12,900円ナリ。

 DD1を選んだ理由のまとめ

  • DD1とDD2の違いは最大(保持)トルクにある。その差は5Nmと小さくないが、CSW2.5の最大出力8Nmからの大幅ステップアップと思えばDD1の20Nmは十分すぎる。
  • モーター制御のプログラムの詳細はわからないが、数々の海外メディアの情報からほぼ同等と判断した。筐体もパネル以外は同等と思われる。
  • 長期補償は不要。FANATECのサポートはこれまでの経験から十分頼りにできるので3年補償で十分。5年後には、もしかしたら3年後には買い替えているかも。
  • キルスイッチは用途を想定できず。(筆者の想像力が乏しいかも)どうしても必要なら後で買い足すこともできる。
FANATEC以外の選択肢

 CSW2.5からのステップアップをFANATEC以外のデバイスで考えるなら、Simcube2 Proは最有力候補となる。SHINJIチャンネルのシンジさんが、公式インフルエンサーとして商品のレビューをされているので参考にされるといい。発生するフォースの強度はほぼ同等。値段も変わらない。筐体のサイズが若干小さいかぐらいか。Simcube2 Proはセンサーの解像度が高く、そのためフォースの出方がDDよりもさらにきめ細かく滑らからしい。シンジさんのnote(ブログ)ではギブソンとフェンダーのギターにたとえられて違いが説明されていたが、大昔にバンドを組んでいた筆者にはピンときたが、読者の皆さんはどうだっただろう。デバイスとしての完成度はどうやらSimcubeの方が高そうで、しかもブラック・フライデーのセール対象にもなっていたのでかなり真剣に購入を検討したが、最終的にはいくつか払拭できない不安があり断念した。

DDに比べると若干スリムなのか

 私がSimcube2 Proを選ばなかったのは国内に正規代理店がなくサポート面で不安を感じたからだ。もはや海外通販に抵抗はないが、商品の重量はなかなかもので送料は1万円を超える。もし初期不良や修理のために送り返すとなれば手間も時間も費用もそれなりに嵩むだろう。現在筆者が保有するFANATECのステアリング(ClubSport Steering Wheel Formula V2 )との互換性の不安もあった。結合部分の仕様は2つでは当然異なる。Simcubeが完全ワイヤレス・システム(ステアリングのスイッチ類は無線信号でPC本体に送られる)なのに対して、FANATECは準ワイヤレスとでもいおうか、ケーブルは無いという意味ではワイヤレスだが、ステアリングとホイールベースはピン端子で接合されデータの送受信をしている。このように仕様が異なるが、とりあえずクイックリリース・アダプターを購入すればSimcubeにFANATECのハンドルを取り付けることはできそうだ。しかしステアリング上の各種スイッチを機能させるためにはピン端子で接続できないため、別途「Conversion Kit for Formula V2 Wheel」なるものを用意しなくてはならない。こちらも海外からの取り寄せとなる。いっそのことステアリングも含めて全てをSimcubeにあわせて新調するという手も考えたが、かっこいいと思った「Conversion Kit for Formula V2 Wheel」はお値段なんと20万円超で、完全に予算オーバーだった。ただ、この超かっこいい「Conversion Kit for Formula V2 Wheel」と「Simcube2 Pro」の組み合わせが筆者のレーシング・シム環境のゴールになる予感を強烈に感じる。購入したばかりのDD1を大変気に入っているが、DD2の存在はあるものの、ひとまずFAMATECの頂点にたった筆者としては、次のターゲットはSimcube Proを中心とした製品群(「Simcube2 Pro2」「Conversion Kit for Formula V2 Wheel」「Heusinkveld Sim Pedals Sprint」での環境づくりということになろう。夢があっていいではないか。

 さて、いよいよ次回はDD1の使用レビューだ。久しぶりにCSWをコックピットに取り付けてプレイした。3週間ぶりだ。すっかりDDの感触になれていたので思った以上に違いを感じることができた。本体から発するモータ類の音の違いもPCMレコーダで記録した。それらのデータを示しつつ、筆者の視点から紹介していく予定である。今回の記事とひとまとめにする予定だったが、長文になりすぎたので分割することとした。

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